近年の猛暑の影響もあり、夏季に大きな話題となる熱中症。
最近では、適切なクーラーの使用の推奨など屋内での注意喚起が呼びかけられていますが、工場をはじめとする労働現場も例外ではありません。
今回は従業員の健康管理の面からはもちろん、生産性にも大きく影響する職場における熱中症とその基本的な対策について見ていきます。
職場における熱中症の発生状況
1年間で、職場においてどのくらいの人が熱中症になっているのでしょうか。
令和5年の厚生労働省の速報値によれば、2013年から2022年までの累計で6755人、うち死亡者は220人となっています。
下の表からもわかるように、その年の気候などによりばらつきはありますが、平均すれば1年間で700人弱の人が就業中に熱中症にかかり、うち20人強の人が亡くなっていることになります。
ただし、このデータは「休業4日以上」という条件下で集計されていますので、軽症の発症者を含めれば、数字は大幅に増えるものと推測されます。
業種別では製造業がワースト上位に
つぎに、どのような業種で熱中症が発生しやすいのかを見ていきましょう。
同じ厚生労働省のデータによると、ほぼ毎年、建設業、製造業、運送業が、ワースト3を占めています。
工場など屋内における作業がメーンの製造業において、屋外の業務に比べても、多くの熱中症が発生していることに注意しておく必要があります。
発生時期については、やはり6月から9月が多く、とりわけ7月と8月で全体の8割以上を占めています。
工場での熱中症発生の原因
工場など屋内作業の製造業でも多く発生している熱中症。その原因を探っていくと、そもそも工場が暑くなりやすい環境であることに行きあたります。
工場が暑くなる要因は建屋の構造や材質、使用している機械にあります。
それらと密接に関係して熱中症を引き起こしているのが輻射熱(放射熱)と呼ばれるものです。
寒い季節に焚き火にあたると暖かさを感じます。あの暖かさの正体が放射熱です。
空気自体は暖かくなっていないのに、焚き火から発せられる赤外線などの電磁波によって人は熱を感じます。
大きなキャンプファイヤーなどでは顔が火照るような熱さを感じるほどです。
真夏の工場でも、これと同じことが起きています。
強烈な直射日光の放射熱によって極めて熱くなった工場の屋根が、巨大なヒーター板のように工場内に熱を放射します。
工場によく使われている金属製の折板屋根では70°C近くになるといわれています。
そして、もうひとつの放射熱の発生源が、工場内で稼働している機械類です。
太陽光と同じように大量に発せられる熱が、工場内の温度を上昇させる原因となっています。
ちなみに、工場内を暑くしている原因の75%は、この放射熱によるものだとされています。
工場での主な予防対策
工場における熱中症予防対策としては、「工場の環境面での対策」と「従事者の体調面での対策」の両面からのアプローチが必要になります。
工場内の暑さ対策
まず、工場の暑さの原因の大きな部分を占める放射熱を抑え込むことがキーとなります。
そこで有効になるのが放射熱をさえぎる遮熱シートの設置です。
具体的には、工場の屋根に遮熱シートを設置することで太陽の放射熱を反射させ、また、工場内の機械に巻き付けること等で放出される熱の発生を抑え込むことができます。
これらの対策を施すことで既存の空調の効率を高め、さらに必要に応じて、スポットクーラーや大型扇風機など個別の対策を考えるという手順ですすめるとよいでしょう。
従事者の体調管理
熱中症対策の基本は冷涼な環境ですが、労働にともなって失われる塩分・水分の補給も欠かせません。
労働の強度に応じて、15分から30分に1度、200mlから250mlほどを目安に水分補給をおこない、休息時間にスポーツドリンクや塩飴などを活用して塩分を摂るように心がけましょう。
また、特に熱中症の危険が高まる暑い時期には、十分な睡眠、規則正しい食事、飲み過ぎの抑制など、いつも以上に基本的な体調管理に気を付けることが必要です。
まとめ
7月、8月をピークに夏場に急増する製造現場における熱中症の実態と原因、そして、対応策の基本となる放射熱対策を見てきました。
熱中症は従業員の健康に関わる基本的な問題であり、また企業にとって生産活動に大きな影響を及ぼす問題でもあります。
猛暑化が危惧される昨今の状況から、今後、より対策が必要とされる可能性もあります。
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