圧縮空気は製造現場をはじめ、さまざまな産業分野や業種で利用されています。
この圧縮空気を利用するとき、必ずついて回るのがドレンの問題です。
今回は、このドレンについての基礎知識と、ドレイン管理の重要性をわかりやすく解説します。
ドレンとは
ドレン(drain)はコンプレッサーなどで圧縮空気を作り出し、これを利用する際に必ず発生する水です。
ドレンが発生する場所はシステムなどによりますが、コンプレッサーやエアタンク、配管など圧縮空気ラインの複数カ所に及ぶことが一般的です。
ドレンの概要
ドレン発生のメカニズム
では、どうしてドレンが発生するのかを見ていきましょう。
コンプレッサーは圧縮するための大量の空気を大気から取り込みます。
この空気のなかには水分の気体である水蒸気が含まれています。
この水蒸気が空気中で飽和状態になると液化し水になります。
コンプレッサーでは圧縮によって体積変化が起こることで、取り込んだ空気が水蒸気飽和状態になりドレンが発生します。
また、コンプレッサーで温度上昇した空気は、エアタンクや途中の配管内などで冷やされることで水蒸気が飽和し、ドレンが発生します。
これは、よく冷えた缶ビールを冷蔵庫から出しておくと、缶のまわりに水滴がつく現象と同じ原理です。
空気が冷やされることで過飽和になり水分が発生するのです。
ドレンに含まれるもの
以上のように、コンプレッサーやエアタンクなどで発生するのは飽和状態になった水蒸気の液化すなわち水です。
しかし、各所で排出される実際のドレンは水だけでなく、他の不純物が含まれています。
そもそも空気中に含まれていたホコリやチリだけではありません。
一般産業用途で広く普及している給油式(油冷式)コンプレッサーは、油によって潤滑やシール、冷却を行なうことで効率を高めていますが、その油がドレンに混入して排出されてしまいます。
ドレン管理の重要性
油など不純物を含むドレンはさまざまな悪影響を及ぼすため、適切な排出を含めた管理が必要となります。
工場機器などへの悪影響
ドレンを適切に管理せず、放置しておくと次のような弊害が起こります。
●エアーブロー時などにドレンが吹き出し、塗装ムラなどの製品品質の低下を招く
●エアタンクや配管の腐食がすすむ
●エアタンクにドレンが溜まることで実質のタンク容量が減り、コンプレッサーの負担が大きくなる
●シリンダーや電磁弁などのエアー機器の不良、故障を引き起こす
生産や製品の品質管理上の支障、思わぬコスト増などを招かないためにも、定期的にドレン抜きを行う必要があります。
環境保全と関連法令
不純物を含むドレンは環境を汚染してしまいます。
このため、「水質汚濁防止法」「下水道法」では次のように定められています。
その一部を抜粋します。
この法律は、工場及び事業場から公共用水域に排出される水の排出及び地下に浸透する水の浸透を規制するとともに、生活排水対策の実施を推進すること等によって、公共用水域及び地下水の水質の汚濁(水質以外の水の状態が悪化することを含む。以下同じ)の防止を図り、もって国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに工場及び事業場から排出される汚水及び廃液に関して人の健康に係る被害が生じた場合における事業者の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図ることを目的とする
(水質汚濁防止法 第一条)
この法律は、流域別下水道整備総合計画の策定に関する事項並びに公共下水道、流域下水道及び都市下水路の設置その他の管理の基準等を定めて、下水道の整備を図り、もつて都市の健全な発達及び公衆衛生の向上に寄与し、あわせて公共用水域の水質の保全に資することを目的とする
(下水道法 第一条)
また、法律に違反した場合は、警告や罰則も定められています。
環境意識が従前にも増して求められる現在、企業価値を損ねないという観点からも、これら法令の遵守は必須といえるでしょう。
まとめ
ドレンは圧縮空気を利用する現場で大きな悩みの種のひとつです。
今回は定期的なドレン抜きといった適切な管理が行われない場合、広い意味での経済的な損失につながることを見てきました。
なお、ドレンについては今後も取り上げていく予定でおりますので、ご期待ください。
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