企業に脱炭素経営に向けた取り組みが求められる今、その第一歩として注目されているのがサプライチェーン全体の排出量の算定です。
自社だけでなく活動領域全体の排出量を把握することが、より効率的、計画的、効果的な環境経営につながると考えられています。
今回は、その基本となるScope3算定方法の概要をご紹介します。
サプライチェーン排出量の概要
その排出量の算定にあたって、国際的な基準とされているのが2011年に発行されたGHGプロトコルによるScope3基準です。
同基準は格付け機関などによる各種の調査項目にも取り入れられ、現在、温室効果ガス排出量の算定と報告の世界共通基準として広く使用されています。
サプライチェーン排出量とは、自社のみならず原料調達・製造・物流・販売・廃棄など、自社の事業活動に関連する一連の流れ全体のなかで発生する温室効果ガスの排出量のことです。
Scopeは、自社の排出であるScope1(燃料の燃焼など直接排出)、Scope2(電気の使用など間接排出)、上流下流の他社の排出であるScope3に分けられ、これらの合計がサプライチェーン排出量となります。
Scope3算定の基本となる計算方法 「活動量×排出原単位」
この中で、サプライチェーン排出量のキーとなるScope3は、さらに上流8、下流7の計15カテゴリーに分類され、各カテゴリーそれぞれについて排出量を算定します。
算定にあたっては、次のような基本式を用いて計算します。
活動量
事業者の活動における規模に関する量です。自社の各種データや文献データ、業界平均データ、製品の設計値等から集めます。
<活動量の例>電気の使用量、貨物の輸送量、廃棄物の処理量など
排出原単位
活動量あたりのCO2排出量の単位です。基本的に「排出原データベース」を用いますが、自社で直接計測する、あるいは取引先から算定結果の提供を受けることでも可能です。
<排出原単位の例>
電気1kWh使用あたりのCO2排出量、貨物の輸送量1トンキロあたりのCO2排出量、廃棄物の焼却1tあたりのCO2排出量など
計算に活用できる環境省資料
「活動量」と「排出原単位」の特定には、環境省が発行しているガイドラインやデータベースの活用が可能です。
<基本ガイドライン>
それぞれのカテゴリーの概要や基本的な計算式が示されています。
<排出原単位データベース>
サプライチェーン排出量算定に使用可能な排出原単位が掲載されています。
<排出原単位について>
排出原単位の考え方、整備方針、使い方、留意点などがまとめられています。
<算定支援ツール>
サプライチェーン排出量の算定に使用することができるExcelファイルです。
上記の資料は環境省運営の「グリーン・バリューチェーンプラットホーム」で入手できます。
まとめ
企業に求められる温室効果ガスの削減。その端緒となるサプライチェーン排出量を算定する基本的な方法と、算定に活用するツールをご紹介しました。
サプライチェーン排出量およびScopeに関しては「温室効果ガス(GHG)プロトコルとScope(スコープ)とは?」「温室効果ガス排出量算定のキーとなる、Scopeの定義と指針」でもご紹介していますので、ぜひご覧ください。
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