地球温暖化の影響といわれる、近年の夏の異常な暑さ。
日本だけでなく、海外の熱波や山火事のニュースを見ていると、国連の事務総長が「地球沸騰化」と表現したのもうなずけます。
今回は、この酷暑がもたらすトラック業界への影響や問題点を見ていきます。
地球温暖化と夏の暑さ
年々暑くなる夏
記録があるこの1898年以降で、今年(2023年)の7月が最も気温が高かったことがわかりました(朝日新聞調査)。
この120年あまりで、7月の平均気温は1.5度ほど上昇、都市部では2.3度も上昇しています。
特に2000年以降は急激に上がっていて、35度以上の猛暑日も急速に増えているという特徴があります。
夏場の気温の上昇は、さまざまな原因でおこります。
「エルニーニョ現象」や「ラニーニャ現象」と呼ばれる異常気象や偏西風の影響、太平洋高気圧の勢力拡大などが直接的な要因ですが、地球温暖化の影響により気温が上がりやすくなっていることが根本にあると考えられています。
夏場の車内温度
夏場に車の室内が高くなりやすいことは、よく知られています。
炎天下での駐車時、どのような状態で、どのくらいの時間で、何度くらいまで車内温度は上昇するのでしょうか。
JAF(日本自動車連盟)が行ったテストによると、窓を閉めた車内の温度は、測定開始30分ほどで約45度、1時間ほどで50度を軽く超え、最高温度は57度に達したという結果がでています(外気温35度、車内測定開始温度25度、黒色ボディ車)。
実験はミニバンを使用して行われましたが、車の室内は極めて温度が上がりやすい空間だということがわかります。
トラック業界における問題点
熱中症の増加
ご存じのように、近年の夏の猛暑化にともない熱中症が増えています。
今年の7月は4週間で、全国の救急搬送数は33,000人に達しました。就業現場でも同様です。
令和5年発表の厚生労働省のデータ(2013年〜2022年)によれば、10年間平均で、1年間あたり700人弱の人が就業中に熱中症にかかり、そのうち20人強の人が亡くなっています。
業種別に見ると、運送業は建設業、製造業に次ぐワースト第3位です。
2022年までの5年間で602名が発症し、死者も8名出ています。これらのデータは「休業4日以上」という条件のものなので、軽症なものを含めれば実際はもっと多いと言えるでしょう。
熱中症は軽度なものでも、運転等に重大な支障をもたらします。万全の予防対策が求められます。
待機中のアイドリング
エンジンを止めたトラックの室内は、エアコンを使えない「灼熱地獄」ともいえる状態です。
走行中はエアコンをかけることで、車内の温度を快適に保つことができますが、問題は荷積みや荷下ろしなどの待機中や休憩時などです。
近隣への迷惑となる騒音の防止を求められる、CO2排出量削減や燃料消費を意識するなど、アイドリングストップせざるをえないためエアコンを使えない場合が多いのが現状です。
2024年問題
運輸業界の働き方改革の一環として来年4月より施行される、いわゆる「2024年問題」。
労働時間の規制によるドライバーの転業の防止、そしてドライバー確保のためにも、トラックドライバーの労働環境の改善が課題となってきています。
その意味で、夏場の過酷な暑さ対策としての運転環境の整備は、ドライバーの健康・安全管理であるとともに、経営戦略の面でも重要なテーマとなっています。
まとめ
今度も懸念される夏の猛暑化、「暑さに弱い」車の室内環境。
そして、それらと関連したトラックドライバーの熱中症の増加、アイドリングできないために起こるエアコンの未使用の問題などをお伝えしてきました。
また、夏場のトラックドライバー環境問題が、来年に差し迫った「2024年問題」においては大きな経営課題となるであろうことも見てきました。このテーマに関しては、対策を含めさらにレポートしていく予定です。
ご期待ください。
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