工場の低炭素・脱炭素化において、最も頭を悩ませるもののひとつが「熱源」の転換ではないでしょうか。各種設備の電化、また電力の再エネ化は進んでも、ボイラーや工業炉で使用している重油やガスの代替手段については、「電化は難しい」「設備投資が莫大になる」と足踏みされている企業様も多いことと思います。
今回は、次世代エネルギーとして注目される「水素」について、熱源の低炭素に寄与する可能性があることを、最新の実証データを交えてご紹介します。

1. なぜ「熱」に水素なのか
日本の最終エネルギー消費の約40%は「熱需要」が占めており、その多くはボイラーや工業炉で消費されています。特に高温や大出力を必要とする設備では、電化が技術的・コスト的に難しいケースが多々あります。
そこで期待されているのが、燃焼時にCO2を排出しない「水素」への燃料転換です。水素は化石燃料と同様に燃やして熱を得ることができるため、既存のプロセスを大きく変えずに低炭素化できる可能性があります。
2.「水素混焼」なら、既存設備が活用できる可能性も
水素ボイラーを導入するには、設備をすべて入れ替える必要があると思われる方も多くいらっしゃると思います。
実は、都市ガスに水素を混ぜて燃やす「水素混焼」という手法であれば、既存の設備をそのまま、あるいは小規模な改造だけで利用できる可能性があります。
株式会社神戸製鋼所高砂製作所にて2023年に開始された実証実験によると、水素濃度20%(体積)程度までであれば、以下の理由から既存の都市ガス用機器の規格範囲内で運転できることが確認されています。
- 燃焼特性が変わらない: ガスの燃焼性を示す数値が、都市ガス(13A)の規格範囲内に収まります。
- 効率・排ガスも維持: 水素を20%混ぜても、ボイラー効率はほぼ一定で、NOx(窒素酸化物)の排出量も大きく変化しません。また、水素を体積比20%混焼によるCO2排出量の削減率は約7%~8%ほどとなります。

つまり、現在の都市ガス燃料に水素を一部混ぜることから始めれば、莫大な初期投資を抑えつつ、CO2排出量を削減するステップへと踏み出せるのです。
3.水素はどうやって調達する?
「技術的に使えるのはわかったけれど、肝心の水素はどうやって工場に持ってくるの?」という疑問もあるかと思います。
水素の供給には、大きく分けて「外部から運ぶ」方法と「工場内で作る」方法があります。
- 外部調達(はこぶ): 液化水素ローリーやカードル搬送などで外部から持ち込み、タンクに貯蔵する。
- オンサイト製造(つくる): 工場の屋根に設置した太陽光発電などの再エネ電力を利用し、水電解装置でグリーン水素を製造します。

最新の事例では、これらを組み合わせた「ハイブリッド型供給システム」の実証も進んでいます。晴れた日は太陽光由来の水素を使い、不足分や夜間は備蓄した液化水素、もしくは系統電源由来の水素を使うことで、天候に左右されない安定供給と、水素コストの最適化を両立させる仕組みです。
4.まとめ
まずは「混ぜて使う」ことから検討を
水素利用は、遠い未来の話ではなく、既存のボイラー設備を活かしながら「混焼」という形で検討できるフェーズに入りつつあります。特に、都市ガスやLNG、LPGをお使いの工場では、比較的スムーズな移行が期待できます。
貴社のボイラーで水素活用は可能?
当社では、お客様の現在の燃料使用状況や設備の状況をおうかがいし、水素転換に向けた簡易シミュレーションや、最新の補助金情報の提供を行っております。
「うちは古いボイラーだけど使える?」「コストはどれくらい上がる?」といった疑問をお持ちの方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
文:エネルギー事業部 営業戦略課
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